ジモット人 INTERVIEW

ジモトを愛する方々にインタビューしました!

vol.08| 岩沢ポートリー 代表 岩澤剛さん/パティシエ 安田恵子さん

個ではなく地域全体に光が当たるように
岩沢ポートリー 代表 岩澤剛さん
パティシエ 安田恵子さん

2021年9月に開催した『ジモティビティ』(→レポート記事はこちらから)に協力してくださった「岩沢ポートリー」。1968年(昭和43年)に養鶏業生産を開始した養鶏場で、こだわりを持って育てられた「姫様のたまご」が有名です。今回は「岩沢ポートリー」代表の岩澤剛さんとパティシエとして姫様スイーツの商品開発や製造に携わる安田恵子さんに、地域への思いや「岩沢ポートリー」と地域とのかかわりについて伺いました。

差別化を目指して生まれた岩沢ポートリーの姫様のたまご

― まずは「岩沢ポートリー」について教えてください。

岩澤さん:
祖母が庭先で100羽ほどの鶏を飼い始めたのがきっかけで、その後、父が会社を立ち上げ、2013年(平成25年)に私が社長に就任しました。入社前に日本国内でも大手と言われる養鶏業者に勤めたのですが、その規模感に圧倒されるばかり。同じ土俵で事業を進めても差別化できないと感じていました。それに地元では「岩沢ポートリー」は養鶏をしているところと知っていただいていますが、まだまだ認知度は低い。社員が愛着や自信を持って仕事をするためにも、ずっと挑戦したかった平飼いを7年ほど前から始めました。その卵が「姫様のたまご」です。

― 姫様のたまごは、他と何が違うのでしょうか?

岩澤さん:
平飼いは文字通り、鶏を地面に放して飼います。まさに特別な部屋で、特別な餌を与えられる鶏(お姫様)です。同じスペースで飼える数は少なくなり、産む卵の数も2割くらい少ないと言われていて生産性は低い。それでも私は平飼いの価値を感じていましたし、例えば、通常卵に比べてDHAやEPA◯倍、ビタミンE◯倍と数字をアピールしなくてもお客様にもっとわかりやすく、美味しいたまごが出来ると思っていました。
また三崎のマグロ、走水の海苔、地元の野菜などを餌として与えているのも特徴です。味が良くなるのはもちろんですが、地元の食材というのがポイントで、地元を巻き込んで地域全体の活性化に繋げていきたいという思いも強く持っています。

― パティシエの視点で感じる違いはありますか?

安田さん:
「姫様のたまご」は卵黄色が鮮やかなので、スポンジの色やプリンの色がまったく違います。そして、卵の味がしっかりと感じられる。例えば、シフォンケーキは生クリームや甘いソースありきのスイーツだと思いますが、シンプルに生地だけでおいしい! 卵が違うだけで、こんなに味に違いが出るのかと驚いたほどです。調理するには繊細な食材でもあるので、作り手さんによりさまざまな工夫が隠されていると思います。百貨店を中心に展開されている「生食パン専門店 麺麭食礼賛 by recette」さん、葉山の「Nicolas & Herbs」さん、三浦海岸にある「Beachend Café」さんなど多くのお取引様で商品開発され、「姫様のたまご」を楽しんでいただける機会が増えています。


 

月1イベント「たまご野(や)の朝市」は地域に賑わいをつくる

― 来年1月に大きなイベントが控えているそうですね。

岩澤さん:
9年前から、地域活性化・地産地消を掲げ、毎月第1日曜に「たまご野の朝市」というイベントをしていました。けれど新型コロナウイルス感染防止のため約2年ほど開催を控えてきました。今回、1年10ヶ月ぶりということもあって不安もありますが、地元メーカーさんをはじめ、県内の有名店、豪華27軒の出店が決まっています。


― 朝市を始められたきっかけを教えてください。
9年間続けるなかで大変なご苦労もあったのではないですか?

岩澤さん:
この地域は交通の便が良いとは言えず、横浜や東京へ出ようとすると、バスや電車を乗り継いで行かなければならない。年配の方の中には、月に1度、子どもや孫が遊びに来た時に車で出かけるような生活をされている方も多い。それが、当社の朝市で気軽に(東京・横浜まで行かなくても)その味を味わう事ができるというのは大きな価値だと思います。30〜40人くらいしかお客さまが来ないこともありましたが、東日本大震災の復興支援や火山活動の影響で立ち入り禁止になってしまった大涌谷・箱根の支援イベントを企画したり、運良くニュース番組に取り上げてもらったり……。周りやお客さまはもちろん、出店メーカー様や当社スタッフに恵まれ現在に至っていると思います感謝です。
以前の私は地域活動に積極的な立場ではありませんでしたが、地元・某会議所の活動を通して地域が活性しなければ企業の発展もないという考えを知り、今はそうした発想の重要性を感じています。


― 「たまご野の朝市」について、お客さまの反応はどうですか?

安田さん:
お客さまがこのイベントを楽しみにしてくださっているのがうれしいですね。朝市のオープンが8時なので、私も準備のために6時前には出社するのですが、早いお客さまはもう待ってくださっている! 店舗の方より早いんです。

岩澤さん:
再開にあたり、お客さまや出店してくださった業者さんから「いつになったらやるの?」「そろそろやろうよ!」と声をかけていただいたのは励みになりました。最近は百貨店のバイヤーさんが視察に来てくださることもあり、注目度が上がってきていることに感謝しています。私一人、「岩沢ポートリー」一社では何もできませんから。一緒に楽しみ、汗をかきながら続けていけたら良いなと思っています。貧乏性でじっとしていられないんですよ。


 

海あり、山あり、畑ありの三浦半島・横須賀の魅力

― 先日の『ジモティビティ』はいかがでしたか? またJIMOTTOとコラボレーションできそうなことはありますか?

岩澤さん:
私たちが当たり前だと思っていることも一般の方にとっては新鮮なことも多いようで、お子さんよりも親御さんが前のめりで参加してくださったのが印象的でした。この体験を通して、ご家族の会話が増えていたら良いですね。また、お子さんが養鶏場見学をしたことをいつか思い出してくれたらうれしいです。普段はできない経験だと思いますので、AI(鳥インフルエンザ)の流行時期でもありますので、また時期をみて『ジモティビティ』を開催したいですね。

 

― 最後に、地元・横須賀の魅力を教えてください。

岩澤さん:
横須賀のある三浦半島は、海あり、山あり、畑あり、豊かな自然の恵みがある地域。地元にいると忘れがちですが、良いものがたくさん揃っている! 日本各地で問題にあがっている食料自給率も、この地域はかなり高いはず。そうした地域の魅力を活かし、地域を巻き込んで、地域全体に光が当り、弊社のコンセプトでもある「大切なひとに。その笑顔のために。」そんな心がけで頑張っていければと思っています。