スポーツの力で地域を元気に、人に笑顔を
Y.S.C.C.理事長 吉野次郎さん

横浜・本牧を拠点に総合型地域スポーツクラブとして活動するY.S.C.C.(NPO法人 横浜スポーツ アンド カルチャークラブ)。トップチームはJリーグとFリーグで熱戦を繰り広げる一方、熱心な地域活動にも注目が集まります。理事長の吉野次郎さんに地元への思い、真に地域に根差したフットボールクラブの在り方をうかがいました。

異文化と地元愛が交差する「本牧」がホームタウン

 

― Y.S.C.C.の活動拠点で、吉野さんの地元でもある「本牧」はどんな街ですか。

かつての本牧は、フェンスの向こうに在日米軍とその家族が暮らす住宅が建ち並んでいました。横浜出身の歌手、柳ジョージさんの名曲『フェンスの向こうのアメリカ』に歌われた世界がそこにはあり、アメリカをすぐ隣に感じていました。ミリタリーポリスの目を盗んで青い芝生の野球場で遊び、夏になるとボーリング場の駐車場で行われる日米合同の盆踊り大会に行き、チリドックを頬張ったのもいい思い出です。本牧はアメリカ文化を感じる尖った街、国際都市横浜を地で行く街、という印象がありますね。

 

― 本牧に暮らす方々の印象を聞かせてください。

本牧には昔からの住民と、移住してきた方々が混在しています。中でも昭和40年代~50年代の「尖った本牧」を知る方々は、この街に人一倍の愛着とプライドを持っていると思いますよ。出身を聞かれると「神奈川県」とは言わず、「横浜の、本牧」と答えますからね。地域のために、というボランティア精神が強いようにも感じます。

 

― 地元愛が強い本牧でY.S.C.C.はどのような立ち位置を目指してきましたか。

クラブの創設以来、地域とつながり共に発展していく公益性、公共性のあるクラブを目指し、2002年に特定非営利活動法人となりました。2013年にJ3への参入が決まったときは、Jリーグができる前からスポーツによる社会貢献を掲げたJリーグの3つの理念を具現化してきたチームとして評価していただきました。これからも地域の役に立つチームであり続けたいです。

「地域はファミリー」。ピッチの外でも街のために汗をかく

 

 Y.S.C.C.のスローガン「地域はファミリー」に込めた思いと、発想の原点を教えてください。

スポーツの世界では、スポンサー企業の経営状況にチームの命運が左右されることがあり、かつて所属した他クラブで同様の経験をしました。以来、企業だけに依存せず地域を柱に活動する必要性を感じ、それが地域と共に歩み始めた私たちの原点です。トップチームが練習グラウンドを借りるのも地域の許可をいただくからできること。クラブを活用していただき、そうした協力の恩返しをしていきたいですね。Y.S.C.C.は総合型地域スポーツクラブとして、スポーツの力を活用して街に元気を届け、ファミリーの一員である地域の方に笑顔の花を咲かせる存在でありたいです。

 

― 地域への恩返しとして、どのような活動をしていますか。

例えば、簡易宿泊所の多い寿町の生活支援センターで、クラブのメディカルスタッフや専門家が一丸となり健康維持に必要な口腔ケア、食育、健康体操のプログラムを提供しています。生活支援センターのスタッフは私が選手だった頃の対戦相手。「スポーツの力を寿町の人達に貸してほしい」と頼まれたのがきっかけです。寿町も私たちのホームタウンなのでもちろん快諾しました。ほかには、テニスやバスケットなどの教室を1コインで楽しめるお母さんが対象の「ほほえみ教室」、子どもたちの「サッカースクール」、プロ選手の「育成」に力を入れています。創設当初は地域の人にとって、「サッカー好きの若者が始めたクラブ」ぐらいの印象だったと思います。地域活動を続けた結果、「この街にとって価値があり、誇りに思えるクラブ」と言っていただけるようになり嬉しい限りです。


― 地域に対するクラブの理念は、トップチームの選手にも浸透していると感じますか。

もちろんです。Y.S.C.C.イズムを持ったベテラン選手から若手選手へ、クラブの理念は脈々と受け継がれていますよ。クラブとしては、選手に引退後も実りある人生を送ってほしいと願っています。そのためには現役時代からピッチの外でも社会とつながり、人のために行動する心意気が大切。自らの商品価値は、誰かの手足となり社会のために動くことで高められますからね。人のために汗を流した経験は人生の財産となり、いつか必ず自分に返ってくる。選手にはそう教育しています。

 

― 2019年には『FOOTBALL×SDGs』をテーマに、
13回目となる横浜開港記念サッカー大会を開催しました。
なぜSDGs※に取り組もうと思ったのですか。

小学校の授業でSDGsが始まることを新聞で知り、子どもたちを預かる私たち指導者が知らないと話にならないと思ったのがきっかけです。手始めにSDGSが掲げる17の持続可能な開発目標に、クラブが行ってきた活動を当てはめていくと、すべての目標に対して活動していることがわかりました。そこで、開催を控えていた横浜開港記念サッカー大会で、SDGsへの取り組みの表明と啓発を行おう。継続性を高めるために、それぞれの開発目標に対して活動する方々とつながりを深めようと、『FOOTBALL×SDGs』をテーマにエキシビションマッチを行いました。国連の定めた目標達成の期限は2030年ですが、クラブでは未来永劫取り組んでいきたいです。
※SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標):2015年9月に国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っている。

 

Withコロナを見据えた新しい価値とサービスの提供に着手

― コロナ禍でも新たな活動を始めたとうかがいました。

そうなんです。コロナ禍で大変な時期だからこそ、新しい価値とサービスの創造は不可欠です。そこでクラブ会員の子どもたちを対象に、「Y’smile~こころの相談室~ IDOBATA」というオンライン相談室を開設しました。ソーシャルディスタンスで人との距離が遠くなりがちですが、ハートだけは密につながっていたいというのが私たちの願いです。オンラインを活用してface to face、heart to heartでつながり、私が子どもたちの悩みに寄り添います。クラブのHPから気軽に利用してください。

 

― Y.S.C.C.の今後のビジョンを教えてください。

JリーグとFリーグのエンターテインメント性を高めつつ、地域に愛され、必要とされるクラブであり続けたいです。

 

― 最後に、「JIMOTTO」とコラボレーションしたいことはありますか。

本牧界隈を巡ると、魅力的な場所や人との出会いに溢れています。長年私たちが地元で培ったネットワークを活かし、地域の人、文化、自然の持つ魅力を共に発信していきたいですね。選手のナビゲートで街巡りなんてどうですか(笑)。ぜひ一緒に活動していきましょう。