ジモット人 INTERVIEW

ジモトを愛する方々にインタビューしました!

vol.07| オルガニスト 西優樹さん、津軽三味線奏者 福居秀大さん

体験を通じて、音楽・楽器の魅力を伝えたい
オルガニスト 西優樹さん
津軽三味線奏者 福居秀大さん

鎌倉の南東、海と山に囲まれた気候穏やかな小さな町、逗子。
この町に生まれ育ち、パイプオルガンと津軽三味線という洋と和の希少楽器を奏でながら、これまでにない音楽を発信しつづける西優樹さんと福居秀大さんに、おふたりの楽器との出会い、演奏活動への想い、今後の活動についてうかがいました。


左:オルガニスト 西優樹さん、右:津軽三味線奏者 福居秀大さん

 

希少楽器との出会いは、突然に

 

― パイプオルガンと津軽三味線。異色の取り合わせですね。ご一緒に演奏されるきっかけは?

西さん:
福居さんとは保育園が一緒で幼なじみです。ただ、だからといってよく遊んでいたというわけでもなく、中学校も一緒でしたが別のクラスでしたし、もしかしたら1回も話したことがなかったかもしれません。

彼が音楽活動をしていることを知ったのは、同窓会のときでした。当時私は、同じく保育園からの幼なじみで、私の高校の同級生でもあるバイオリニスト佐藤悠紀さんと一緒に音楽活動をしていました。

同窓会のあと、福居さんが津軽三味線を演奏していることを話していて、すごく珍しい楽器だったので一緒に演奏活動をしたいねとなって、それでなかば強引に誘ったのがコラボするきっかけです。

 

福居さん:
私たちは性格が真逆というか、僕はどっちかというと暗いタイプなんですが、西さんは明るいタイプ。
彼女がピアノを弾くことは知っていましたが、「一緒にやろう」と言われて、初めは「えっ」と思いました。
もう10年くらい前のことですね。


― パイプオルガンと三味線。合わせるのがすごく大変そうですね。

西さん:
ものすごい大変。これまで一緒に演奏したことのない楽器で、手探り状態からのスタートでした。
洋楽器では当たり前と思っていたことが、和楽器の世界では当たり前でなかったりもしました。

福居さん:
西さんと佐藤さんは譜面が読めるので、初見でもすぐ演奏できますが、僕は譜面が読めなくて。
津軽三味線は基本的には譜面を使わないので、とにかく暗記というか、覚えるしかなく。
だから合わせられるようになるまで、とにかく時間がかかりました。それなのにふたりとも、難しい曲ばかり演奏しようって話しを持ってきて。

西さん:
いろいろなジャンルの曲に挑戦しています。クラシックや和の曲もあれば、ジャズやボサノバとか。


― ともに希少楽器。始められたきっかけを教えてください。

福居さん:
きっかけは祖母です。祖母が民謡の先生をしていて、三味線の音は小さい頃から聴いていました。
祖母の三味線は、いわゆる普通の三味線で、津軽三味線とは違い、静かな音色で演奏します。

小さい頃から三味線をやれやれと言われていたのですが、その音色から「三味線は女の人が演奏するもの」というイメージを抱いていて、ずっと避けていました。

それが15歳の夏休みに祖母に連れられて、いまの師匠である福居典大の稽古場を訪ね、初めて津軽三味線を聴いて、その音色に衝撃を受けました。これまでイメージしていた三味線とは全然違うことを知り、それから津軽三味線を始めて、今まで続いている感じです。



西さん:

私がパイプオルガンの道に進もうと思ったのも、高校生のときです。2歳からピアノを習っていて、小さい頃から作曲のコンクールに応募したり、趣味で曲をつくったりしていました。

中学のとき、将来どうなりたいか考えて、音楽しかないと思って高校の音楽科に入学し作曲を勉強していたのですが、高校2年生のときパイプオルガンの音色に出会って。じつは中学の音楽の授業でパイプオルガンの音色を聴いて心に残っていたのですが、改めて聴く音色に、この道だと決心しました。

進学した大学のパイプオルガン科で指導いただいた先生がすごい方で、パイプオルガンだけでなく、チェンバロやクラヴィコード、ヴァージナル、ピアノなど全ての鍵盤楽器を演奏されていました。

その先生の演奏が大好きで、自分も同じようになりたいと思い、大学ではパイプオルガン以外の楽器の勉強もしました。先生のようになれたらいいけど、自分は自分らしく演奏していきたいなと、現在、鍵盤奏者のような感じで活動しています。

 

新しい世代に音楽や楽器の魅力を伝える


― おふたりとも保育園や学校などで演奏活動をされています。

西さん:
子供たちに音楽を教えたいという思いがあります。とにかく小さい頃から音楽を聴いてほしい。
自分たちのスタートが遅かったからかもしれませんが、早くから知ることで世界観はもっと広がると感じています。習わなかったとしても、知っているのと知らないのとでは違いますから。

福居さん:
民謡自体を知らない若い方が多くなってきました。
これから始めたいという人も少ないと思います。それもあって保育園などでも演奏活動をしています。
もちろん三味線や民謡に興味を持ってもらえれば嬉しいのですが、三味線に限らず僕も小さい頃から音楽を聴くことは大切だと考えています。何の曲でもいいので、いっぱい聴いてほしいですね。


― 福居さん民謡への想いをお聞かせください。

福居さん:
民謡は昔からその場所に根付いた音楽です。日本全国にその場その場の民謡があります。
たとえば沖縄といわれたら、沖縄のメロディがなんとなく浮かぶ。津軽民謡も「これが津軽だ」と感じさせる音楽になっています。
もちろん逗子にも、逗子の民謡があるはずです。

クラシックも生まれた場所をイメージできる音楽で、ある意味「民謡」的といえるのではないでしょうか。
世界中に「民謡」的な音楽があるのだから、日本人ももう少し自分たちの民謡のことを知ってもいいんじゃないかと思っています。


― 「JIMOTTO」とコラボレーションとして、
2021年12月4日に「パイプオルガン・津軽三味線体験!」&「Thanksコンサート」を開催

西さん:
ふたりとも珍しい楽器で、その楽器がすごく好きで、演奏活動をずっと続けてきました。
だから、できるだけ多くの人に私たちの演奏している楽器を体験して、その魅力に触れてもらえたらと思っています。どなたでも興味がある方はどうぞ、みたいな感じで、気軽に参加して楽しんでいただけると嬉しいですね。

福居さん:
体験することは大切なことです。
僕だって彼女と一緒に演奏活動をしていなかったら、パイプオルガンを聴かなかったかもしれませんし、そもそもパイプオルガンとピアノの違いも分からなかった。津軽三味線も、普通の三味線と形は一緒ですが、全然違う楽器です。

実際に体験するということは、テレビに流れているものをちょっと見る、ということとは全然違います。
ぜひ身近で見て、体験してもらいたい、あと生で音を聴く経験もしてもらいたいですね。

当たり前の場所から、今後も音楽を発信しつづける

 

― おふたりは、逗子でずっと活動されています。逗子の魅力とは?

西さん:
逗子は私たちの生まれた場所で、いるのが当たり前という感じです。すごく居心地がいい。小さい町で、出かけると必ず誰か知り合いに出会うというのが逗子ですね。人と人の繋がりもけっこう濃いと思います。

福居さん:
嫌なところがないというのは魅力なのかもしれませんね。嫌だったら出ていきますから。
最近は都内などから逗子に住みたいという人が増えてきていますが、周りから見た人が住みたいと思えるのが一番の魅力ではないでしょうか。

 

― 逗子には音楽活動をされている方が多い?

西さん:
私たちと一緒に活動している佐藤もそうですし、12月にジャズのビッグバンドの方たちと私たち3人とでコラボするのですが、声をかけてくださったジャズシンガーも逗子の方です。私の大学の先生も、やはり近所に住んでいます。

音楽を学ぶうえでは、環境も大切で、逗子みたいなのんびりしたところは、音楽を追求するのにいい環境なのかもしれませんね。行き詰まったときには海辺を散歩したり、気分転換できる場所もありますし。

― 逗子で、今後どのような活動をされる予定でしょうか?

福居さん:
まずは身近な場所で、地元の若い人に私たちの演奏している楽器や音楽に触れ合ってもらいたいですね。
いまインタビューを受けているこの場所も20人くらい入ると思いますが、このくらいの規模でピアノや三味線を聴いてもらうと、迫力が全然違います。

西さん:
新型コロナの影響でこの2年くらい音楽活動が本当にできなかった。音楽ホールもいいですが、古民家といった、もっと人が入ってきやすい場所でも活動できればと思います。

パイプオルガンは難しいけど、ヴァージナル(小型のチェンバロ)を持っているので、いろいろな場所で演奏できます。オルガンやピアノとは違う古楽器の良さを知ってもらえる何かができたらいいですね。


― 「JIMOTTO」とコラボレーションできそうなことはありますか?

福居さん:
具体的なビジョンは見えていませんが、小さい町ならではのネットワークを活かしながら、今あるものと津軽三味線を繋げていける活動がしていきたいですね。それが逗子を盛り上げることにつながればいいなと思っています。