「西湘地域の価値を世界へ」というビジョンを掲げ、2025年6月Plum Town株式会社を立ち上げた善波弘志さん。善波さん自身、生まれも育ちも小田原、「これからも小田原を離れる理由がない」と語り、地元・小田原の活性化を目指し奔走しています。そうした活動の原点や現在の取り組み、Plum Town株式会社が販売する小田原固有の「十郎梅」を使用した梅酒などについてうかがいました。

地域を思う原点はボランティア活動で感じた無力感
― 最初に、今の活動に繋がる善波さんのプロフィールを教えてください。
僕は母子家庭で育ちました。大学進学を考えるようになったとき、安くない学費を負担してもらうからには、母にきちんと目的を伝えたいと思ったんです。小学2年生から高校を卒業するまでサッカーしかしてこなかったので、その時、改めて考えてみると「大学生は社会人になるための準備期間であり、社会に出るということは人や社会の役に立つことをするため」という自分なりの考えがまとまりました。大学卒業後は、地方銀行、人材サービス業、ソフトウェア企業、そして地方特化型の人材採用を手がけるXLOCALに勤務して、2025年6月に「Plum Town株式会社」を立ち上げました。
― 学生の頃から社会人になることを人や社会のためと考えられる人は少ないと思います。
僕が高校3年のときに東日本大震災が起き、大学1年の夏休みに2週間ずつ、気仙沼と石巻にボランティアに行くことにしたんです。両親を亡くした子どもたちのための学童のような施設で、活動しました。「人にためになる、人の役に立つ」という思いで現地に行ったんですが、そこにいた子どもたちが抱えている苦しみに比べたら僕ができることはあまりにも小さくて……。ボランティア稼働を終えた時には「刹那的な支援はもうやめよう」と思うようになり、帰るときには何もできなかった後悔と無力感だけが残りました。この経験が自分の中の大きなきっかけの一つになり、ずっと向き合っていかなければならないテーマの一つになりました。

― ボランティア活動はよいことだとわかっていても踏み出せない人が多い気がします。
その一歩を踏み出せる理由を教えてください。
医学部の学生がボランティアサークルを立ち上げて、カンボジアに学校を建てるという『僕たちは世界を変えることができない。』という映画を見たときにキャップが外れたというか。大学生でも本気でやれば、海外に学校を建てることができるのか!って。夢が広がったというか、僕にもできることがあったら、とことんチャレンジしてみたいと思うきっかけになりました。その一方で、学校を建てることができたとしても、世の中や社会は変えられないというメッセージもあって。どこからが社会貢献で、どこまでが自己満足か、今もその境を彷徨っている感じがしています。
― 大学在学中から地域活動にも参加されているそうですね。
大学生の頃も変わらず小田原に住んでいたので「小田原で何かしたい」と自然と思うようになりました。生まれた地であり、育った地であり、すごく好きな場所であり墓場までここでしょうから(笑)、人生をかけて小田原で何かをやり続けたいと。そこで参加したのが「神奈川県西部子ども劇場」という団体で、子どもたちと一緒に舞台劇を見たり、キャンプなどをしています。人や社会の役に立つ人になるためにはどうしたらいいかという自問自答は続いていて、コンプレックスのようになっているのですが、まずは長期で、何かを伝え続けていくことはできるんじゃないかと思って続けています。15年以上経ち、僕の核を作っていると感じるようになってきましたし、今はうちの子どもも参加しています。

歴史×地の利、地域の誇りになる逸品を創り出す
― 昨年設立された「Plum Town株式会社」の事業について教えてください。
ずっとここで暮らしてきて、地元の小田原を「いい街だ」と誇っている人が少ないのではないかと思ったんです。コロナ禍以降、移住者は増えていて、いい街と言われますが、それは東京へのアクセスが良い立地や自然などの環境面に過ぎない。例えば、北海道の海鮮のように世界を目指すほど突き抜けたものがあれば……。それなら、僕が世界を驚かせるものを作って、それが地域の方の誇りになったらいいなという考えに至りました。

小田原の魅力を洗い出していくと梅に行き着きます。600年の歴史があり、偕楽園(茨城県)、越生梅林(埼玉県)と並んで曽我梅林(神奈川県小田原市)は関東三大梅林に数えられます。それなのに、担い手の高齢化が進み、後継者は不足、耕作放棄地も増加傾向です。「小田原梅まつり」には30万もの観光客が訪れるというのに、肝心の梅林は廃れる一方。市章のモチーフにもなっている梅をこのままにしていいはずがない。それに、地域固有の良さとは「歴史」と「地の利(ほかの地域や社会が真似できないもの)」の2つの要素の掛け合わせと聞いたことがあります。小田原の固有品種である「十郎梅」はその2つを備えていて、研ぎ澄ませていけば可能性があると思ったんです。
Plum Town株式会社では、「十郎梅」に付加価値をつけて、ビジネスとして成立させていくことに取り組んでいます。刹那的なかかわりではなく、それこそ墓場までコミットし続けることが自分の中では納得感があり、やりがいもある。それが、子どもや地域の方の誇りに繋がればと思っています。

― すでに商品の販売が始まっているそうですね。
日本が海外に輸出している食品で一番多いのは、日本酒やウイスキーをはじめとしたアルコールなんですよね。世界に出ていくことを視野に入れて、僕たちの梅酒『THE HEALING LIQUEUR「SOGA」』は1本7,700円(税込)です。それくらいの価値があるし農家さんに還元するためにも、この価格で勝負しようと決めました。「十郎梅」だけを使用したブランデーベースの梅酒です。ラベルは書道アーティストの方に梅園をイメージして書いていただき、1本1本風呂敷で包んでいます。日本に根差している工夫する文化や様式美も一緒に届けていきたいと考えました。

― お客さまの反応はいかがですか?
神奈川を代表する温泉地・箱根の高級宿が取り扱いを始めてくださっています。みなさん、地域への循環・還元を目指す僕らの取り組みに共感してくださっているのはもちろん、地産のラグジュアリーな梅酒として好意的に受け入れてくださっています。味は東京の三つ星フレンチ出身のソムリエの方が「おいしい」と認めてくださいました。ワインの世界でよく語られるテロワールという言葉がありますが、「SOGA」も小田原固有の自然環境も含めた価値や体験を提供できると、僕たちの自信になりました。
現在は、小田原市のふるさと納税の返礼品になっているほか、自社のオンラインショップから購入していただけます。

「十郎梅」を起点に描く今後の目標
― 地域で活動するなかで見えてきた気づきや、課題を教えてください。
一番は人手不足ですね。そして、地域の方と梅(梅園)との距離があることです。そこで今日(取材当日は梅園での収穫体験を実施)のような収穫体験イベントを企画しました。僕らの友人や「神奈川県西部子ども劇場」のメンバーが集まってくれているのですが、小田原市民も実は梅の収穫をしたことがある人はほとんどいない。一緒に収穫しながら、「十郎梅」をはじめたくさんの品種があること、それが地元の高級で希少な梅であることを知ってもらいたい。そして将来的に、一緒に収穫した梅で作られた梅酒が世界に出ていくことになったら、街の誇りになると思うんですよね。梅を食べたり、飲んだりするだけじゃなくて、体験と組み合わせて小田原を知る機会にして、みんなで梅園を守るコミュニティを作れたらいいですね。

― 今後の目標を教えてください。
今日、収穫体験をしてもらっているのは、長くこの地で梅園を営んできた農家さんから受け継いだ自社農園です。今年は、初めて自社の梅で酒作りに挑戦できるのが嬉しくもあり楽しみです。先ほども話したように、日本のお酒は世界に向けて発信されていて、高い評価を受けています。日本酒は「獺祭」、ウイスキーなら「山崎」のように、梅酒なら「SOGA」と言われるようなポジションを目指したいですね。今はブランデーベースだけですが、ウイスキーベース、日本酒の大吟醸ベースなど、ラインナップを増やして、ペアリングなど新しい楽しみ方とともに梅酒を広めていきたいです。

― Jimottoが一緒にできることはありそうですか?
キッチンカーを呼んで、ジモット限定のイベントを企画するのはいかがですか? 実際に梅園に来ていただくと梅の実の香りを感じられたり、目の高さに梅の木があるなど観光梅園とは違う良さを感じていただけるはず。2月頃の梅の花が咲く時期は特におすすめです。花見の起源を辿ると、桜ではなく梅を楽しんでいたそうですよ。海沿いを走る西湘バイパスのドライブしながら、小田原に足を運んでいただけたら嬉しいです。

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THE HEALING LIQUEUR 「SOGA」|小田原・曽我 十郎梅のクラフト梅酒【公式オンラインショップ】
小田原・曽我の希少な十郎梅と名水「丹沢の雫」で仕込むクラフト梅酒 「SOGA」。【公式オンラインショップ・全国配送】
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