大空を舞う大きな凧 体験レポート

2023.4.9

工程⑩ | 糸目・引き綱&引っ立て棒づくり

凧を揚げるのには欠かせない、糸目・引き綱づくり

前回の作業で大凧の骨組みができ、大凧制作も残りわずか。全体が見えてきましたね!
今日のメイン作業は、凧本体に付ける「糸目」と凧を揚げる際に持つ「引き綱」を作ります。また、大凧を平置きの状態から起こす(引っ立てる)際に使用する「引っ立て棒」も今年は修正を加えるということで、早速本日の作業スタートです!

カニ爪のような金具がポイント!“引っ立て棒”

竹や和紙で作られた大凧はとても重く、人の力だけで支えることができないほど。6間凧では、重量が約700kgというから驚きです!このように重い大凧なので、起こす際には道具が必要となります。それが、竹と金具を使った槍のような“引っ立て棒”。実は、昨年の作業でもその制作の様子をご紹介していました!

6間凧を支える引っ立て棒は全部で13本。昨年作った引っ立て棒を保管してある場所から全て出し、使用している竹の状況を確認します。1年も経つと竹が虫に食われてしまっていることもあるようで、その場合は金具を竹から外し、新しい竹に金具を付け替えます。

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引っ立て棒は、凧のどこを支えるか、立てかける場所によって長さが異なります。使用する竹の長さを揃え、必要な箇所には補強用の木材を取り付け、重たい大凧をしっかりと支えらるよう強化します。

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よく見ると、竹に番号が書いてあります。この番号は、どこの位置にどの引っ立て棒を使うかの目印。番号があれば、会員の方々はどこに引っ立てて使うのか一目瞭然だそうですよ。カニ爪のような金具を針金で固定し、さらに針金を隠すように上から麻紐で巻いて引っ立て棒の完成です。

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皆で一斉に引っ張る、“引き綱”づくり

続いて、引き綱を作っていきます。凧を揚げるときに皆で引っ張る、あの綱です!
今年の大凧には、新しい引き綱を使用します。初めて使用する綱は、凧を揚げた際に引っ張られて綱が伸びてしまうそうなので、少しでも先に綱を伸ばしておくことが大切なのだそうです。その伸ばし方が驚き!人力では限界がある為、車を使用して綱を伸ばします!

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綱の端を木に固定し、反対側の端は車へ固定。声を掛け合いながらゆっくりと車を動かして少しずつ綱を引っ張っていきます。5mくらい伸ばしたところで数分放置。

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こんなに綱が伸びました!(手前が元々の綱、奥が伸ばした綱です)これだけ伸ばしても、凧が天高く揚がれば、さらに綱が伸びてしまう可能性もあるそう。予想しているよりも綱が伸びてしまうことを心配されていました。皆さん何度も経験してきていることだと思うのですが、やはり、大きな凧を揚げることは大変で危険も伴うこと、ということがよく伝わってきました。

大凧本体と引き綱を結ぶ“糸目づくり”

“糸目”と呼ばれる紐も、引き綱と同じく、今年は新しいものを使用します。先ほどの引き綱より細めの紐を合計41本!

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新しい紐では凧が揚がって引っ張られた時に伸びてしまうため、こちらも事前に伸ばしておきます。まずは、全ての紐を地面に置いた竹に結び付けていきます。ここでの結び方は、次回行う予定の大凧への糸目付け作業の際にも用いる、代々継承されてきた結び方。先輩から結び方を教わり、できているか確認をしてもらっていました。次回の作業の予習ですね!

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ずらーっと並んだ糸目の1本の長さは約52m。詳しくは次回の作業で紹介しますが、この中には“みつかん”と言って凧の3か所に付け糸目の基準となる紐もあります。この3本の取り付け方や長さによって、凧が揚がった際の角度が決まるそうですよ。
糸目を全て並べ終えたら、竹とは反対側の端を綱引きのように引っ張り、紐を伸ばしていきます。

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力いっぱい引っ張るので、竹を押さえる側も大変!私も全体重をかけ必死に押さえました…!人力で頑張っても約1mも伸びていないそう。糸目も凧を揚げた際にもっと伸びるだろうと心配されていました。大凧を空へ揚げるためには緻密な計算や全体のバランスが大切なのだと、作業を通して感じていたので、紐が伸びてしまうことでそのバランスが崩れることを危惧されていたのだと思います。

引き綱と糸目に使用している紐の織り方が少し特殊だったことに気が付きましたか?
引き綱で使用した綱は、船が停泊時に使用するものと同じだそう。“クレモナ材質”と言って、強度・耐久性・使い易さに優れていて、ポリエステルが含まれているので水に濡れて乾いた後でも縮んで硬くなることもない、丈夫な素材だそうです。引き綱の編み方の種類は“クロス打ち”で、2本を組んで1本にした紐をさらに4本組んだもの。風を受けて揚がる大凧にも負けない強度も兼ね備えています。
また、糸目の編み方は12本で組み合っている“金剛打ち”と言い、よじれやほつれが発生しにくく、摩擦に強く、しなやかで柔らかい、扱いやすい紐だそうです。
引き綱や糸目以外にも、小手縄巻きや結ぶ際の紐など、各所で最適な紐が使われているのですね。

空に舞う大凧を安定させる“尾っぽ”

凧の“尾っぽ“ってなに?と思った方も多いはず。尾っぽは、凧の重心を下げ、風に引っ張られることで凧を安定させる役割を果たします。大凧に限らず、どの凧にも尾っぽ(しっぽ)が付いていますね。空に揚がった時に風の吹き方次第では凧がくるくると回転…それも尾っぽが防いでくれます。これだけ大きな凧が上空でくるくる回ってしまっては大変です!
10m超えの大きい凧なので、安定させるためには付ける尾っぽも長い!

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使用するのは、長さ70m~80mの細めの縄。3本を1本にまとめていきます。

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端を編み込み固定したら、30㎝感覚でとっくり結び(紙押さえの作業でたくさん結んできましたね)をしていきます。端まで来たら、再度編み込んで完成!!

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尾っぽは、凧の両端と真ん中の3か所に付けるそうです。長い上に尾っぽ3本分だったので、こちらも大変な作業でした…!

今回の作業はここまで。次回は大凧づくりの集大成、凧揚げにとても重要な“糸目付け”の作業です!