
二幸技研
Nikougiken
長年培ってきた技術力と知識で試作開発の味方
創業以来、ハンドワークでの製法が発展して「注型」という技術(主に「真空注型」:マスターモデルをもとにシリコーンゴムで型を作成し、真空状態の中で硬化する注型用樹脂を注いで、複製品を製作する技術 )を主力としている、二幸技研。自動車メーカーのプラスチック製品量産に向けた金型を立ち上げるまでの試作品をメインに造っています。お客様のもとへ品質の良い車としてお届けできるまでには、試作から量産まで様々な技術や工程、多様な部品が複雑に絡みあっている…その一端を担う会社です。今回は、二幸技研の新規事業課 取締役 秀倉健太さんにお話を伺いました。

他に負けない技術「注型」
私は16歳の頃から二幸技研にお世話になっています。当時は経営難で、親兄弟4名で経営している親族会社でした。工業高校に入学したけどなかなか環境に馴染めずに中退して、川崎の街でプラプラ遊んでいた時に父親が、経営が厳しく現場の人間も減り新しい人も雇えない状況だけど、ウチでしかできない仕事があるからアルバイトで手伝えと、耳を引っ張って連れてこられたのが始まりです。
その当時、大手某自動車メーカーさんの内装の部品を量産している会社からの受注が全てで、お抱えの試作屋として「注型」という技術を認めてもらっていました。世界で大人気の車メーカーで、柔軟なものづくりをして独創的な車が多く、大型のものが多かったですね。大きなシリコンの型を持ち上げて、液状の粘度の強い樹脂を流し込んでいくんですが、圧力をかけすぎるとバンッって破裂しちゃうので、樹脂をかぶりながら何度も試行錯誤を重ねてものづくりをしていました。その後も様々な試作品や仕事をいただくことが多くなったので、会社は活気づいてきました。
100から0(ゼロ)へ
私たちが注型で一生懸命に作っても、実際に量産で使われる樹脂とは異なる素材を使用しなければならず、強度も同じくらいのものを作りますが、最終的には量産で使われる試作金型をおこして評価をするため、時間がかかるんですよ。ちょうど自動車メーカーさんの車がヒットしていたので、当時の社長さんが「スピード開発!試作いらない!」と方針転換されて。その会社さんの仕事が100%でしたから、いきなり0(ゼロ)ですよ…。対策もうまく取れず、なんとかしようと踏ん張っていたところに、工場長がドイツにナイロンを注型できる機械があるらしいという情報を持ってきたんです。
ドイツから機械を導入
ちょうどエンジンの開発にナイロン製の試作品が必要だという話をいただいて、藁をもすがる思いでドイツからその機械を入れました。しかしドイツの機械だから日本では上手くいかないんですよ、全然。風土も気候も違うのでドイツの材料だと日本の湿度に合わず、材料の成分が湿度(=水)と反応してナイロンになるための触媒がなくなってしまうんです。主原料自体も入れている途中で湿度を吸ってしまうので、どうあがいても無理で…ドイツだから確立する技術だったんです。でも諦めてしまえばお客様に迷惑をかけることになるので、機械を改造したり材料を研究したり、いろんな人たちに助けてもらいながら主原料の入れ替えに成功し、機械を動かすことができました。今では売り上げのほぼ全てを担う製法になっています。
特許取得の自社開発ナイロン注型
『3NI-NYLON』
ナイロン注型「3NI-NYLON」は現在商標登録をしています。“3NI”というのは、二幸の“NI”、ご協力いただいた静岡県富士市にある西川鉄工さんの“NI”、材料についてお力をいただいた化学的な研究をされている西山さんの“NI”からとりました。 一般的に注型と言われる製法は、基本的に使われる樹脂が限定され、熱硬化性と言われる熱を加えて固まる性質の樹脂(樹脂エポキシやウレタン等)でしかできません。概ねプラスチックと言われる樹脂の1割程度で、リサイクルが効かないんです。例えるとビスケットのような。焼き上がったビスケットが溶けることはないように、再加熱すると焼け焦げるような樹脂です。逆に量産で使われている樹脂は、熱可塑性と言うチョコレートのように溶かしてもまた固まる、リサイクルが可能な樹脂です。様々なカスタム、グレード、種類があって、大半のプラスチック製品として生産されています。基本、熱可塑性の樹脂は注型では使えませんが、弊社は熱可塑性の樹脂で注型できるように原料を開発して、特許を取得。KBIC(ケービック/かわさき新産業創造センター)に7年間程入居して、たくさんの方々のご協力をいただきながら完成させました。その7年間は何物にも代えがたい経験でしたね。。
タカツクラフトとの出会い
東邦プラテックの三枝さんに声をかけられて、川崎100周年のイベントでちょっとお手伝いしたのがきっかけ。タカツクラフトの皆さんの姿を見て、単純にいいなぁと。皆さんの人柄とか受け取れるものがあったんです。自分はまだ新人で幽霊部員みたい(笑)ですが、川崎だからできることをタカツクラフトメンバーでお互いを補いながら、新規事業ができたらいいなと思っています。先輩たちの思いなどを聞きながら何かウチでできることがあればやっていきたいですね。
シンプルにものづくりが好きな人、例えばバイクや自転車をいじるのが好きとか、この会社は注型がある、切削もある、こんな3Dプリンターもあるんだって、実際に自分でものをつくってみたい♪っていう気持ちがある人はいつでもウェルカムです!
仕事以上にサーフィンが大好きだという秀倉さん。仕事は人生の時間の大半を占めているからと、何事にもポジティブに取り組んで、より幸せである状態に持っていくことを心がけていらっしゃいます。苦労がある中でナイロンが固まった瞬間が一番嬉しいと輝く笑顔でお話しいただきました。幼少期にしか川崎に住んでいなかったそうですが、センスがある川崎が大好きだと川崎愛にもあふれています。

Information
株式会社 二幸技研
住所:〒216-0005 川崎市宮前区土橋6-14-12
営業日:土・日・祝
営業時間: 8:30~17:00
https://nikougiken.jp/


