[市民活動/子育て支援・コミュニティスペース]

誰も孤立させない

障がいを持つ若年層や子育て世代が
社会から孤立しないための居場所づくりと同時に
地域の理解者を増やす活動をしています。

Kids Fine
代表
渡辺 晃子さん

「助けてほしいと思って活動しているわけではないんです。地域に理解者を増やすことが大切で、一緒に活動していただければ何かのきっかけになったり、気づくことがあると思うんです」と話すKids Fine代表の渡辺 晃子さん。幼稚園教諭として子育ての現場で触れてきた困り感を原点にスタートさせた活動についてうかがいました。さらに、渡辺さんの想いに賛同し、活動に参加しているメンバーにもそれぞれの考えを聞かせてもらいました。

子ども好きと小学生の頃の原体験
――すべてのはじまり

30歳を過ぎてから独学で資格を取り保育士になった母の影響もあってか、私は子どもながらに子ども好きで、小さな頃から夢は保育士や幼稚園教諭になることでした。周囲から「子どもの面倒を見るのが上手」と言われ、「私は子どもとかかわることが得意なんだわ!」と自分の中で疑いのないものになっていました。

さらに、小学生の頃の担任の先生が「特別支援学級の子たちと触れ合うことも大事だよ」と教えてくれたことも今になって振り返ってみると大きかった気がします。実際に、たとえ咄嗟に言葉が出なかったとしてもお友だちになれてしまう。一緒にお花を見たり、校庭をお散歩したり、ブランコに乗ったり。そんなことが当たり前で、境なく過ごした記憶が私の根っこのところにずっとあるのかもしれません。

現場で知った困り感を解消したい
──模索する日々

子どもの頃からの夢を叶えて、保育士、幼稚園教諭として15年くらい働いた後、支援が必要なお子さんと専門的に接する児童発達支援管理責任者の資格を取得して管理者をするなど、多くの子どもたちとかかわりながら20年以上続けてきました。それと同時に、忙しく大変なお母さんもたくさん見てきました。家での仕事はもちろん外の仕事もあって、「いつ休むんだろう」「役割がたくさんあって大変だ」と感じる場面に何度も直面しました。

私自身は、子育てが一段落して放課後等デイサービス(障がいのある就学児を対象とした通所型の療育支援・居場所提供サービス、利用には市区町村が発行する「受給者証」が必要)で働いていた頃、改めて現実を突きつけられるというか、壁に直面しました。

親御さんと面談すると、お子さんが「授業中に椅子に座っていられない」「忘れ物をする」などの目の前ことで手一杯なことが多くて。確かにそれも大切ですが、卒業後の就職先とか、もっと考えるべきことがあって、「一緒にがんばりましょう」とお声がけしても、お互いに限界はある。そんな現実にモヤモヤしていました。しかも放課後等デイサービスは高校生までしか利用できません。卒業後も月に1回「映画を見ましょう」と外で待ち合わせをすることはできなくもないですが、それが本当のサポートになるのだろうか、社会性を身に付けて自立を促すことができるのだろうか、単なるお節介で終わってしまうのではないか……と、葛藤が続きました。

そんなとき、卒業後も継続して繋がれる居場所をつくれたらいいなと思ったんです。同じような想いを持った同僚たちが賛同してくれて、食品衛生管理者の資格を持ったメンバーも揃っていたので、夏はかき氷、冬はおでんを出すようなお店を開くのが最初のイメージでした。

Youth事業とKids事業
──2つの活動を軸に0からのスタート

2022年に、放課後等デイサービスのスタッフ有志とともにKids Fineを立ち上げました。紆余曲折あり、「利用者さんが駅まで明るい道を歩いて帰れるように」と選んだマンションの1室を確保して、「とにかくやってみよう」と手探りで始めたのが、放課後等デイサービスの利用を終えた18〜22歳を対象にした「Youth事業」です。平日は就業されているので、日曜日の14〜16時に拠点となる部屋をオープンしました。

その後、週に1度しか稼働しない拠点の活用と以前から課題意識があった子育て世代のサポートのために、「Kids事業」がスタートしました。目指したのは、乳幼児期の子育て世代を社会から孤立させないこと。SNSで私たちの活動を発信したり、こちらからアプローチして講師に集まってもらい、親子で参加できるものや、あえてお母さんを対象にしたものなどさまざまなプログラムを用意して、集まっていただける場を提供しました。家計の負担にならないように、1プログラム1コインの500円という主婦目線の設定にしました。

地域に理解者を増やす
──優しい社会への第一歩

2025年参加メンバー自身が日曜の予定を決められるようになったので、「Youth事業」は現在、月2回の活動をベースにしています。地域のボランティア活動に参加して、テント張りや駐車場の誘導、子どもたちのサポート係のほか、買い出し、お菓子やドリンクの販売などにも挑戦し、主催側から「イキイキした姿が素晴らしい、また一緒に活動したい」と評価されたこともあります。メンバーさんからは「初任給で家族にお寿司をご馳走した」、「休日に遊ぶ会社の仲間ができた」という報告があったり、「23歳の誕生日を機に、次は自分がボランティアとして活動にかかわりたい」と泣けるほど嬉しい声をかけてくれたこともありました。18〜22歳という限られた期間ですが、こちらが驚くような成長を見せてくれるのは本当に嬉しいことです。

「Kids事業」は、プログラムを運営してくださっている先生方とともに、子育て世代のお役に立てればと思っています。「こんな場所があったらいいな」という想いからスタートさせたので、周囲にモデルにするような事例があったわけではありません。必要に応じてその都度、柔軟に形を変えながら運営しているというのが実情です。ベビーカーですら日々変化、進化しています。保育士として出会ってきたお母さん方の困り感が、今でも目に焼き付いているから、「自分たちの活動は正しい」ということではなく、今求められていることに応えていくことが大事だと思っています。

今後は、地域に理解者を増やしていく段階です。「困っているから助けて!」と言いたいのではなく、自分が弱っているときに誰かを頼れたり、周囲から「大丈夫、どうしたの?」と声をかけてもらえる繋がりが大事なんです。一緒に活動すると、知らなかった世界を知るきっかけになります。それは障がいのあるなしだけでなく、お年寄りにとっても同じこと。おじいちゃん、おばあちゃんと生活したことがない人であれば「こういうところでつまずくことがあるんだな」と気づけたり、逆に「そんな知恵があるんだ!」と教わることがあったり。そうやってお互いに補い、助け合うことで社会が優しく回っていくはずで、理解し合えれば大きなトラブルになることもないはずです。Kids Fineの活動を通して、誰もが地域や社会と繋がりを持ちながら、自立した暮らしができるように。そのお手伝いを、自分が得意なことや持っているものを“お裾分け”するような感覚で支えていきたいです。

「孤立と自立。社会との繋がりで人生は豊かになる」

障がいを持つ若年層と子育て世代という社会から孤立しがちな人たちに寄り添い、自立を後押しする。現場の困り感から生まれたKids Fineの存在は、大きな勇気を与えているだろう。そんな市民活動が、SDGsの取り組みも盛んな相模原市で生まれたのは偶然ではないとさえ思える。他者や地域への理解を深め、誰もが安心して社会参加できる未来への礎が着実に築かれている。


+αInterview

渡辺さんの想いに賛同して、ともに活動するメンバー(同志)からも、Kids Fineへの想いや自身が活動に参加する理由などをうかがいました。

あっぴーさん(瀬沼 亜紗美さん)

あっぴー さん(瀬沼 亜紗美さん)

Kids Fineのイベントがあきこさん(渡辺さん)との出会いです。あきこさんは、誰かのために生きているタイプで、「私も同じ、一緒に盛り上げていかなきゃ!」と思ったんです。それ以来、イベントがあればチラシを作ったり、必要なら司会をしたり、何でもやっています。ちなみに今の本業は小学生ドッジボールチームの監督、経験はないんですけどね(笑)。地域活動やボランティア活動は、続けているうちにどんどん楽しくなるんです。

イトノハナヤさん

イトノハナヤ さん

知人の紹介からKids Fineで『羽休め』講座を主催しています。休みなく過ごしているお母さん自身が疲れてしまうことが絶対にあると思うんです。そんなとき、「自分の時間が持てる場所になったらいいな」と講座を開いています。参加してもらうことで、ある意味、強制的に日常から離れることができる。少人数でゆっくりお茶を飲んでいただくと、普段できないような深い話もできてリフレッシュしていただけるのかなと思っています。

Hapimama room 谷中恵梨さん

Hapimama room 谷中恵梨 さん

16年ほど保育士をして、マルシェやイベントの主催などをしています。Kids Fineでは『ベビーマッサージ』講座をしています。今はバリバリ稼くことより、お母さんと話したり、赤ちゃんがリラックスできる時間を一緒に過ごす方が私にとって価値があると感じて参加しています。それに、Kids Fineをきっかけに人との繋がりが広がって、私自身がエネルギーをもらっている(笑)。ひとりでは何もできないですが、ここに来ると「私もやらなきゃ!」と思えるから不思議です。

花っぱら ゆみさん

花っぱら ゆみ さん

15年ほど保育士をして独立した後も、親子にかかわる仕事を続けたくてKids Fineで『ウクレレリトミック』を担当し、今後はウクリート(ウクレレ+リトリート)を広めていきたいと考えています。お母さんはいつも子どもが優先。Kids Fineのイベントに参加される理由もそうだと思うんです。自分のことは後回しで我慢することが多いお母さん自身にリフレッシュしてもらえる講座を目指しています。リピートしてくださる方も多くて、嬉しく思っています。

高柳 眞木子さん

高柳 眞木子 さん

『みらい子育てネットさがみはら連絡協議会(旧母親クラブ)』の会長をしています。子育て支援に関連するリーフレットや研修会などを通して、あきこさんの活動を応援しています。私自身、夫の実家がある相模原に移り住んできたとき、友だちも知り合いもいない寂しさから公民館に駆け込んだことがあったんです。そこで『母親クラブ』を知り、地域との繋がりの大切さを身をもって知りました。それ以来、子育て世代をサポートする活動を30年くらい続けています。

インタビューの中で皆さんに共通する想いは愛だと気づきます。愛をかけるとそれに応えてくれる。その循環から生まれる価値が原動力となり、Kids Fineの活動が支えられていることがわかりました。

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